kvライブラリにおける区間演算の実装についてC++による精度保証付き数値計算ライブラリであるkvについて、 その区間演算部分の実装について説明する。具体的には、 (1) 端点にdouble以外の型を入れた区間演算の仕組み、 (2) double-double型を用いた区間演算、 (3) 最近点丸めのみを用いた区間演算、 (4) 最近のIntel CPUの一部に搭載されたAVX-512を用いた高速な区間演算 などについて触れる予定である。
C++11によるポリシーを導入した数値線形代数クラスの作成とその応用数値線形代数に関するライブラリは世の中に非常に多くある.しかし,各ライブラリは独立しておりライブラリ毎に使用方法が変わってしまう.それにもかかわらず,BLASを使った高速計算,多倍長を用いた高精度計算,それらの精度保証付き数値計算までを使いこなす受け皿となるライブラリは未だ見たことがない.そこで,C++を利用して上記を達成するライブラリの設計方法を紹介する.さらに,様々な型による数値線形代数の計算が必要な偏微分方程式の解に対する計算機援用証明法に応用してみる.
Jacksonの第2種q-Bessel関数の精度保証付き数値計算これまで様々な特殊関数の精度保証付き数値計算法が開発されてきたが, 可積分系などの数理物理で現れる q-特殊関数の精度保証付き数値計算法はまだない. q-特殊関数の精度保証付き数値計算法を確立するため, 可積分系で現れる Jackson の第 2 種 q-Bessel 関数の精度保証付き数値計算法の研究を行なった. 本講演では我々が以前提案した交代級数の性質を用いる方法, 積分を用いる方法, 二重指数関数型積分公式(DE 公式)を用いる方法と漸近展開を用いる方法を提案する.
2数の大小比較に対する浮動小数点フィルタの生成方法についてある2つの計算に対する真の値をそれぞれa, bとする.数値計算を用いるプログ ラムの中ではaとbが正確に求まらず,近似の結果を得ることが多い.数値計算の 誤差により近似計算の結果の大小関係がaとbの大小関係と異なることがあり,if 文などの分岐処理を間違えることがある.そこで,この問題に対する浮動小数点 フィルタを提案し,数値計算による符号の判定が正しいことの十分条件を与える. また,計算幾何学を例に挙げて,具体的な使用方法を紹介する.
半正定値計画法の高精度求解とその応用半正定値計画法は、対称行列は行列の固有値を0以上に保ちつつ、線形関数を最小化する問題である。 応用範囲が広く、多粒子電子系の基底状態を求めるという問題も含む。 通常は内点法で解くが、最適解付近で精度が悪くなるため、正解の判別が困難な場合がある。 中田らはこれの多倍長精度演算を用いるバージョンを開発し、一見正解が得られたように見えるが、 実は高精度計算で検証すると間違った値が得られていた例などを紹介する。
Rigorous results in electronic structure calculationsElectronic structure calculations, in particular the computation of the ground state energy, are of enormous importance in quantum chemistry. Variational methods for computing lower bounds of the ground state energy typically lead to large-scale semidefinite programming problems. Upper bounds are calculated for instance with the Hartree-Fock method. However, Nakata et al. observed, that due to numerical errors the solver produced erroneous results with a lower bound larger than the Hartree-Fock upper bound. Violations within one mhartree were observed. We present here a method for computing tight rigorous error bounds without these violations.
高精度な近似逆行列を求めるアルゴリズムがうまく動かない例題の作成法連立一次方程式の解法において前処理行列により条件数を下げる事はCG法などの収束を早めるだけでなく、精度保証付き数値計算でもとても重要である。悪条件な問題でも条件数を下げる事ができ、前処理後の条件数がほぼ1となるような高精度な近似逆行列を求める方法がS.M.Rump氏により提案されている。本発表ではこの方法がうまく動かない例題の作成法を提示する。この例題の作成法をもとに前処理後の条件数が下がるための条件を議論する。
実対称正定値行列を係数行列とする連立一次方程式の数値解の 高速精度保証法本発表では,実対称正定値行列を係数行列に持つ連立一次方程式の数値解に対す る精度保証付き数値計算法について述べる.先行研究として,コレスキー分解と 同等の計算コストで精度保証が可能な手法がRump,Ogitaによって提案されてい る.この方法は,コレスキー分解の残差ノルムの上限を係数行列から計算する. 我々は,残差ノルムの上限を改良し,スーパーコンピュータ「京」に実装した結 果.また,大規模疎行列に対する数値実験結果について紹介する.
連立一次方程式の数値解に対する高信頼性の保証と高精度計算 について本発表では, 連立一次方程式の高信頼な数値解を得るアルゴリズムと関連する保 証定理を紹介する.可能な限り連立一次方程式に対する精度保証の計算時間を短 縮し, faithful roundingやrounding to the nearest,最適な下端・上端型区間 による解の包含を達成する手法を提案する. 最後に高精度内積計算アルゴリズム を拡張したアルゴリズムについて,いくつか紹介する.
高次元力学系のホモ・ヘテロクリニック軌道の検証について連続力学系のホモクリニック軌道もしくはヘテロクリニック軌道の精度保証法について議論する。 検証方法は、山野・松江・山本によって開発された写像度を用いる手法をベースとする。この手法は 3次元力学系に限定して記述されるものであったが、これを4次元以上の高次元力学系に拡張することを試みる。 4次元以上の力学系では図形的な直観が効かないため、これまでの方法の構成の記述・証明に大幅な変更が必要となる。 講演では現時点で明らかとなっている問題点を含め、高次元問題に対処するためのアイデアを解説する予定である。
ハイブリッドシステムの可到達集合の精度保証連続系と離散系の両側面をもつハイブリッドシステムは、物理環境と密に結合 された組込みシステムの直感的なモデルとして有用である。ハイブリッドシス テムの安全性検証や高信頼シミュレーションにおいては、系の可到達集合 (reachable set) を精度を保証しながら近似計算することが重要になる。 ダイナミクスや境界条件が多項式や非線型式で記述される非線形ハイブリッド システムについても、常微分方程式の求解、制約プログラミング、SMT (satisfiability modulo theories) などの手法を駆使し、可到達集合の精度 保証付き数値計算が可能になりつつある。本発表では、ハイブリッドシステム の可到達集合に関する研究背景を述べ、最近の提案手法・ツール について紹 介する。
Einstein方程式の離散化方程式とその数値安定性についてEinstein方程式は拘束条件付き発展方程式であり、その構造から数値計算とともに拘束条件が破れやすいことが知られている。 本発表では、離散化した拘束条件の時間発展方程式を中心として、拘束条件が破れてしまう理由と改善方法を紹介する。 またそれに伴う数値結果も紹介する予定である。
Einstein方程式の数値計算における安定性の取り扱いについて昨今、重力波の直接観測が多数報告され、重力波天文学の時代が幕を開けた。重力波がどのような現象で生じたのかを解明するためには、あらかじめEinstein方程式を解いて予測する必要がある。Einstein方程式は発展方程式と拘束方程式に分解され、拘束方程式を満たすように数値計算する。本講演では、拘束方程式の時間発展である拘束伝播方程式を用いた固有値解析を軸に安定性の検証について述べる。
重調和問題の解に対する構成的誤差評価2次元線形重調和方程式の弱解とその有限次元近似解に対する構成的誤差評価手法と 検証結果を紹介し,その過程で生じたいくつかの課題について述べます.
有限時間特異性:基礎的計算法が生み出す豊かな解構造本講演ではある点で特異になる微分方程式の解の精度保証付き数値計算について論じます。 対象は退化(放物型)微分方程式の有限進行波解、微分方程式の爆発解、fast-slow系における特異canardなどが含まれます(ここでは最初の対象にフォーカスします)。 力学系理論に由来する多少の工夫を入れることで、行列の固有対の精度保証付き数値計算、微分方程式の積分、標準的な誤差評価によって様々な構造を持つ解を構成できます。 特に、解の定性的性質だけでなく定量的性質も計算できるようになったことから、今後の数値計算の発展の仕方を議論できればと思います。
非線形熱方程式の複素時間における解の挙動と精度保証付き数値計算周期境界条件下の藤田型非線形熱方程式に対して時間変数を複素数に拡張した初期値境界値問題を考える.この問題は有限時刻で解が爆発することで有名であるが,時間変数を複素数に拡張する事で解析接続により複素領域に解を拡張できることが知られている.近年,岡本らは数値計算によって解の振る舞いを観察し,いくつかの予想を発表した.本発表ではこの解を精度保証付き数値計算する方法について紹介する.