2021/03/20(土)kv-0.4.51

ものすごく久しぶりに、kvライブラリを0.4.51にアップデートしました。

変更点は以下の通りです。
  • 区間演算を行うinterval.hppにfloorとceilを追加。
  • 区間演算と領域の再帰的分割による最適化を行うoptimize.hppが場合によって正しく終了しなかったバグの修正。
  • 高階微分を計算するhighderiv.hppが定数関数を渡されたとき動作しなかったバグの修正。
  • 昨年11月のNVR2020の発表で作成した、複合Newton-Cotes公式を用いた数値積分のための関数群を追加。
大した変更や追加はないのですが、コロナ対応での多忙で時間が取れず、3月になってようやく少し時間が出来たので思い出しながらファイルを整理し、公開できる状態までもっていきました。数値積分のところのドキュメントに手間取りました。

highderiv.hppとoptimize.hppはともに数値積分の誤差項の計算に使われており、昨年11月の発表の際にいろいろ使ってみて不具合が発覚しています。やはり使われて鍛えられないとライブラリの完成度は上がらないので、ご利用下さると大変嬉しいです。

2020/06/21(日)Ubuntu 20.04のBLAS (dgemm) をベンチマーク

Ubuntu 20.04で、aptでインストール出来るBLASの速度を、dgemm (倍精度の行列積) でテストしてみたので、記録を残しておきます。

BLASとは

BLAS (Basic Linear Algebra Subprograms) は、行列とベクトルの単純な操作を行うプログラム群です。有名な数値線形代数のプログラム集である LAPACK (Linear Algebra PACKage) の内部で使われています。行列とベクトルの操作は、特に最近のキャッシュメモリに依存したアーキテクチャのCPUではCPU毎に最適な書き方が異なるので、LAPACK本体から切り離して自由に差し替えられるようにしておき、ユーザがLAPACKを動かすときにその計算機に最適なBLASに差し替えることによってLAPACKは最高の性能を発揮するようにデザインされています。

Ubuntu 20.04で使えるBLAS

Ubuntu 20.04で探してみたところ、aptで簡単にインストールできるBLASが5種類ありました。それぞれの特徴と、インストールコマンドを書いておきます。
  • Reference BLAS
sudo apt install libblas-dev
LAPACKと一緒に配布されているBLAS。入出力インターフェースのReferenceを与える、という意味合いと思われ、中身は単なるfor文で高速化を考慮したものではありません。
  • ATLAS (Automatically Tuned Linear Algebra Software)
sudo apt install libatlas-base-dev
CPUの特性に合わせて自動的に各種パラメータをチューニングして性能を引き出すBLASです。make時に何通りもの大きさの計算を繰り返して最適な大きさを探るため、makeにはものすごく時間がかかります。実行するマシン上でmakeしないと意味がないので、aptによるbinary配布では本来の性能は発揮できないはずです。
sudo apt install libblis-dev
Ubuntu 20.04で使えるBLASを探していて、今回初めて知ったBLAS実装です。最近できたものでしょうか。AOCL (AMD Optimizing CPU Libraries) で採用されていたので、AMDのCPUに強いのかも知れません。
sudo apt install libopenblas-base
sudo apt install libopenblas-dev
有名なオープンソース実装のBLAS。かつて、GotoBLASというテキサス大学の後藤和茂氏による高速で有名なBLAS実装があって、その後藤氏のIntelへの移籍で開発が中断したとき、有志がそのソースコードを引き継いで発展させたものです。その後藤氏は現在Intelで後述のMKLに関わっているそうです。
sudo apt install intel-mkl
Intelが提供している、BLASを含む数学用ソフトウェアパッケージで、オープンソースではありません。最近、aptで簡単にインストールできるようになりました。極めて高速とされています。

さて、これらは同じBLASの機能を提供するshared libraryです。同時にインストールすると上書きされてしまうのでしょうか? Ubuntuではそのような場合にsymbolic linkを利用してファイルを切り替える機能を提供しています。上記の5つのライブラリをインストールした状態で、
sudo update-alternatives --config libblas.so-x86_64-linux-gnu
とすると、
There are 5 choices for the alternative libblas.so-x86_64-linux-gnu (providing /usr/lib/x86_64-linux-gnu/libblas.so).

  Selection    Path                                                   Priority   Status
------------------------------------------------------------
  0            /usr/lib/x86_64-linux-gnu/openblas-pthread/libblas.so   100       auto mode
  1            /usr/lib/x86_64-linux-gnu/atlas/libblas.so              35        manual mode
* 2            /usr/lib/x86_64-linux-gnu/blas/libblas.so               10        manual mode
  3            /usr/lib/x86_64-linux-gnu/blis-openmp/libblas.so        80        manual mode
  4            /usr/lib/x86_64-linux-gnu/libmkl_rt.so                  1         manual mode
  5            /usr/lib/x86_64-linux-gnu/openblas-pthread/libblas.so   100       manual mode

Press <enter> to keep the current choice[*], or type selection number:
のように表示され、「*」の印がついたライブラリが現在使われているもので、番号を入れるとそのライブラリに切り替えることができます。これはlibblas.soを切り替えるものですが、libblas.so.3も同様にupdate-alternativesの管理下にあるようで、念の為そちらも同じように切り替えて実験しました。
sudo update-alternatives --config libblas.so.3-x86_64-linux-gnu
There are 5 choices for the alternative libblas.so.3-x86_64-linux-gnu (providing /usr/lib/x86_64-linux-gnu/libblas.so.3).

  Selection    Path                                                     Priority   Status
------------------------------------------------------------
  0            /usr/lib/x86_64-linux-gnu/openblas-pthread/libblas.so.3   100       auto mode
  1            /usr/lib/x86_64-linux-gnu/atlas/libblas.so.3              35        manual mode
* 2            /usr/lib/x86_64-linux-gnu/blas/libblas.so.3               10        manual mode
  3            /usr/lib/x86_64-linux-gnu/blis-openmp/libblas.so.3        80        manual mode
  4            /usr/lib/x86_64-linux-gnu/libmkl_rt.so                    1         manual mode
  5            /usr/lib/x86_64-linux-gnu/openblas-pthread/libblas.so.3   100       manual mode

Press <enter> to keep the current choice[*], or type selection number:

ベンチマーク

これらの5つのライブラリについて、DGEMM (倍精度行列積) の速度を計測してみました。使ったプログラムは、次のようなものです。
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <time.h>

// prototype declaration
void dgemm_(char *transA, char *transB, int *m, int *n, int *k, double *alpha, double *A, int *ldA, double *B, int *ldB, double *beta, double *C, int *ldC);

int main(int argc, char **argv)
{
	int i, j;
	int m, n, k;
	int size;
	double *a, *b, *c;
	double alpha, beta;
	int lda, ldb, ldc;
	struct timespec ts1, ts2;

	size = atoi(argv[1]);

	m = size;
	n = size;
	k = size;

	a = (double *)malloc(sizeof(double) * m * k); // m x k matrix
	b = (double *)malloc(sizeof(double) * k * n); // k x n matrix
	c = (double *)malloc(sizeof(double) * m * n); // m x n matrix

	for (i=0; i<m; i++) {
		for (j=0; j<k; j++) {
			a[i + m * j] = rand() / (1.0 + RAND_MAX);
		}
	}

	for (i=0; i<k; i++) {
		for (j=0; j<n; j++) {
			b[i + k * j] = rand() / (1.0 + RAND_MAX);
		}
	}

	for (i=0; i<m; i++) {
		for (j=0; j<n; j++) {
			c[i + m * j] = 0;
		}
	}

	alpha = 1.;
	beta = 0.;
	lda = m; 
	ldb = k; 
	ldc = m; 

	// dgemm_(TransA, TransB, M, N, K, alpha, A, LDA, B, LDB, beta, C, LDC)
	// C = alpha * A * B + beta * C
	// A=M*K, B=K*N, N=M*N
	// Trans: "N"/"T"/"C"
	// LDA = number of row of A

	clock_gettime(CLOCK_REALTIME, &ts1);
	dgemm_("N", "N", &m, &n, &k, &alpha, a, &lda, b, &ldb, &beta, c, &ldc);
	clock_gettime(CLOCK_REALTIME, &ts2);

	printf("%g\n", (ts2.tv_sec - ts1.tv_sec) + (ts2.tv_nsec - ts1.tv_nsec) / 1e9);

	free(a);
	free(b);
	free(c);

	return 0;
}
BLASはFortranで書かれていて、C言語から呼びやすくしたcblasというインターフェースもあるのですが、ここでは直接BLASを呼び出しています。n×n行列を2つ乱数で初期化し、その積を求めています。また、参考のために単なるfor文のi-j-k loopで書いた行列積のプログラムとも比較してみました。そのプログラムは以下の通り。
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <time.h>

double **alloc_matrix(int n, int m)
{
	double **a;
	int i;

	a = (double **)malloc(sizeof(double *) * n);
	a[0] = (double *)malloc(sizeof(double) * n * m);
	for (i=1; i<n; i++) {
		a[i] = a[0] + i * m;
	}

	return a;
}

void free_matrix(double **a)
{
	free(a[0]);
	free(a);
}

// a: n x m, b: m x s, c: n x s
void m_m_mul(double **a, double **b, double **c, int n, int m, int s)
{
	int i, j, k;
	int i1, j1, k1;

	for (i=0; i<n; i++) {
		for (j=0; j<s; j++) {
			c[i][j] = 0.0;
		}
	}

	for (i=0; i<n; i++) {
		for (j=0; j<s; j++) {
			for (k=0; k<m; k++) {
				c[i][j] += a[i][k] * b[k][j];
			}
		}
	}
}

int main(int argc, char **argv)
{
	int i, j, n;
	double **a;
	double **b;
	double **c;

	struct timespec ts1, ts2;

	n = atoi(argv[1]);

	a = alloc_matrix(n,n);
	b = alloc_matrix(n,n);
	c = alloc_matrix(n,n);

	for (i=0; i<n; i++) {
		for (j=0; j<n; j++) {
			a[i][j] = rand()/(1.0 + RAND_MAX);
			b[i][j] = rand()/(1.0 + RAND_MAX);
		}
	}

	clock_gettime(CLOCK_REALTIME, &ts1);
	m_m_mul(a, b, c, n, n, n);
	clock_gettime(CLOCK_REALTIME, &ts2);

	printf("%g\n", (ts2.tv_sec - ts1.tv_sec) + (ts2.tv_nsec - ts1.tv_nsec) / 1e9);

	free_matrix(a);
	free_matrix(b);
	free_matrix(c);

	return 0;
}
これらを、
cc -O3 dgemm.c -lblas
cc -O3 forloop.c
のようにコンパイルしました。

環境は、core i7 9700、Ubuntu 20.04で、dockerの中で計算しました。ただ、core i7 9700は8コアですが、どういうわけか8コアで計算させると非常に不安定で、BIOSで1コア殺して7コア生かすという特殊な環境で計算させました。

結果は、次のようになりました。

result.png


横軸は行列サイズ、縦軸は計算時間です。なお、すべて一回しか計測していないため、特に小さいサイズの行列で計算時間が短いあたりは信頼性が低いです。参考程度に見て下さい。

MKL、OpenBLASは、自動的にマルチコアを使って計算してくれました。BLISは、
OMP_NUM_THREADS=8 ./a.out
のように環境変数をつけてあげるとその数のコアを使って計算しますが、何も付けないとシングルコアになりました。ATLAS、Reference BLASはシングルコア計算でした (ATLASはこのマシンでmakeすればマルチコアを使うはずです、念の為)。

マルチコアを使い、また十分チューニングされていると思われる3つは、非常に速いです。特にBLISは知らなかったのですが、十分完成度は高そうです。Reference BLASはこんなもんでしょう。自作i-j-k loopは更に非常に遅いですが、例えばi-j-kをi-k-jにするだけで結構違うはずです。

このグラフを見ると、MKLの小サイズ行列が妙に遅いのが気になります。巨大行列でガンガン計算する分には気にならないでしょうが、用途によってはこれでは困りそう。何か使い方を間違っているのかな?

2020/04/21(火)Ubuntu 20.04 インストール (リンク集)

2020/04/21(火)Ubuntu 20.04 インストール (10)

その他入れた細々としたもの。
sudo apt install openssh-server
これでsshログイン出来るようになります。
sudo apt install git
sudo apt install curl
このへんはまあ必要か。
sudo apt install unar
これを使うと、日本語ファイル名を含んだzipファイルを展開したときに文字化けしないです。

後は個人的に必要なもの。
sudo apt install lv
sudo apt install checkinstall
ホームディレクトリに作られる「ダウンロード」などのディレクトリが日本語だと何かと不便なので、英語表記に直します。ターミナルで、
LANG=C xdg-user-dirs-gtk-update
として、「Don't ask me this again」をチェックして「Update Names」をクリックします。これでホームディレクトリが
ダウンロード  デスクトップ  ビデオ    ミュージック
テンプレート  ドキュメント  ピクチャ  公開
から
Desktop    Downloads  Pictures  Templates
Documents  Music      Public    Videos
に変わりました。元に戻すにはLANG=Cなしで単に「xdg-user-dirs-gtk-update」。

さらに、ふと目を離すとロックされてパスワードが要求されるのが嫌なので、設定→プライバシー→画面ロック で、自動画面ロックをオンからオフに変更しました。

2020/04/21(火)Ubuntu 20.04 インストール (9)

何かとお世話になることが多くなった、dockerを入れます。

18.04のときは本家サイトで野良(?)インストールしていましたが、
sudo apt install docker.io
で19.03.08が入ったので、とりあえずこれを使うことにしました。また頻繁にversion upがあるようなら考え直すかもしれません。
sudo usermod -aG docker kashi
みたいにしてrootにならなくても使えるようにしました。
OK キャンセル 確認 その他