2015/06/06(土)kv-0.4.21

kvライブラリを0.4.21にアップデートしました。

今回は、一応今までもひっそりと機能はあった、端点特異性を持つ関数の数値積分のコードを大幅に書き直し、機能も追加し、また詳細なwebドキュメントを書きました。端点特異性を持つ関数のうち、
  • 除去可能特異点を持つもの。例えば \int_0^1 \frac{\sin(x)}{x} dx
  • ベキ型特異点を持つもので、xpg(x)の形のもの。例えば \int_0^1 \sqrt{x}\cos(x)dx
  • ベキ型特異点を持つもので、f(x)pの形のもの。例えば \int_0^1 \sqrt{\sin(x)}dx
  • ベキ型特異点を持つもので、f(x)pg(x)の形のもの。例えば \int_0^1 \sqrt{\sin(x)}\cos(x)dx
  • log型特異点を持つもので、log(x)g(x)の形のもの。例えば \int_0^1 \frac{\log(x)}{x+1}dx
  • log型特異点を持つもので、log(f(x))の形のもの。例えば \int_0^1 \log(\sin(x))dx
  • log型特異点を持つもので、log(f(x))g(x)の形のもの。例えば \int_0^1 \log(\sin(x))\cos(x)dx
などを精度保証付きで計算できるようになりました。

その他、conj(共役複素数)を追加したり、全解探索における反復改良が稀にうまくいかなかったのを直したりしました。

最近少しずつユーザが増えてきて、最新のmacのclangで計算値が正しくないことがありそうとか、win7 32bit環境とVC++2012でddの表示がうまくいかないとか、報告を受けています。実機が用意できなかったりこちらでうまく再現しなかったりしてなかなか直せませんが、極力対応していきたいと考えていますので、こちらの環境(ubuntu 64bit)と異なる環境での動作報告、お待ちしております。

2015/04/16(木)kv-0.4.20

kvライブラリを0.4.20にアップデートしました。

今回は、主に端点に無限大を持つような区間に関するbug-fixです。区間演算ライブラリは、端点に無限大を持たせることによって半無限区間や全区間を取り扱えるように設計されています。区間演算の実装は、上端下端型と、中心半径型の2種類が考えられますが、本ライブラリでは半無限区間や全区間を扱えるという上端下端型のメリットを重視し、上端下端型を採用しています。

端点に無限大が入ると、無限大-無限大、無限大/無限大、無限大*0などでNaNが発生する危険性があり、これらを注意深く排除する必要があります。今回、乗算において思慮が浅かった部分が発見され、きちんと考えなおした上で修正しました。詳細なアルゴリズムは 端点に無限大を持つ区間演算まとめを見て下さい。無限大を扱わない場合は問題ありませんが、無限大を扱った計算において、0.4.19以前のライブラリの計算結果は精度保証されていなかった可能性があります。0.4.20へのアップデートをお勧めします。

また、sinh, coshに-無限大を入れた場合の不具合も修正しました。

2015/03/23(月)kv-0.4.19

kvライブラリを0.4.19にアップデートしました。

主な変更点は、
  • mpfrである程度以上仮数部の長い数を扱ったとき、e, ln2, piの定数の 精度が不十分なため区間幅が小さくならない問題を修正。
  • atanhの端点処理をちゃんとやるようにした。
  • ddとmpfrにceilとldexpを追加。
です。特に最初のが重要な修正です。

区間演算では、テンプレートを使って、interval<double>ならdoubleにふさわしい精度で、interval<dd>ならdouble-doubleにふさわしい精度で数学関数の計算を行う仕組みになっています。この仕組みで困るのが定数の計算で、定数は入力を持たないのでどの精度で計算すべきか判断できません。そこで、(numeric_limits<T>の使い勝手に倣って) constants<T>::pi(), constants<T>::e(), constants<T>::ln2()を用意し、Tの型によって計算精度を変える仕組みを採用しています。で、これらの実装は、例えばpiなら、
template <class T> struct constants< interval<T> > {
    static interval<T> pi() {
        static const interval<T> tmp(
            "3.1415926535897932384626433832795028841971693993751",
            "3.1415926535897932384626433832795028841971693993752"
        );
        return tmp;
    }
}
のように文字列で上端下端を与えそれを上下に丸めることによって得ていました。この定数は10進数50桁で円周率の上界下界になっています。doubleとddしか無ければこれだけ精度があれば十分だったのですが、mpfrで50桁以上の精度を指定した場合、(精度保証は出来ているものの)定数の区間幅が広すぎてまともな精度が出ない事態になっていました。ここの仕組みを変えて、きちんとその型なりの定数の計算方法を書くようにしました。

2015/03/12(木)kv-0.4.18

前回からほとんど時間が経っていませんが、kv-0.4.18にアップデートしました。

0.4.17で、lgammaにdouble以外の型を入れるとコンパイルできないバグを混ぜてしまっていたので修正しました。いつもならもう少し修正が貯まってから公開するのですが、某所でlgammaが必要だったのですぐに公開しました。ついでに、第1種Bessel関数(整数次のみ)の簡単な実装を追加しました。

2015/03/07(土)kv-0.4.17

久しぶりに、kvライブラリを0.4.17にアップデートしました。

主な変更点は、
  • 特殊関数の説明文を書いた。特にガンマ関数の計算方法の詳細を書いた。
  • 内部で例外として使っていたrange_errorをdomain_errorに変更。
  • 数学関数を含む常微分方程式が正しく解けないことがあったバグを修正。
などです。

2番めの例外についてちょっと補足しておきます。区間演算やaffine arithmeticなどでゼロ除算や負の数の平方根などが出てきたとき、プログラムをただちに停止せず例外をthrowするようになっています。そして、常微分方程式や全解探索などの上位プログラムでは解くべき問題の関数評価をするときにtry-catchでこの例外をcatchし、例外が起きてもすぐに諦めずにステップ幅を小さくしたり区間を分割したりするような実装になっています。この例外として、0.4.16以前はrange_errorという例外を使っていたのですが、どうやらdomain_errorの方がふさわしそうなので、プログラム全体でdomain_errorを使うように変更しました。

普通に使ってるだけならあまり関係のない変更ですが、例えばaffine.hppをコピーして改造して使っているような方がいれば、同じように変更した方がいいでしょう。単に一括置換するだけで大丈夫ななずです。

忙しい1月2月を過ぎて、やりたいこともいろいろ溜まっているのでここから頑張ろう。
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